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オンラインストレージをSDSとownCloudとのハイパーコンバージド構成で作ってみる
前回の記事では、ownCloudとIzumoFSを別々のサーバにインストールしましたが、今回はownCloudを冗長化し、かつシステム全体でのサーバ台数を減らすことのできるハイパーコンバージド構成で、オンラインストレージを作ってみました。
ハイパーコンバージド構成のメリット
- システム全体のサーバ台数を抑え、スモールスタートが可能
- 構成がシンプルでシステム全体としての拡張、冗長化や負荷分散の設計・運用が容易
- ownCloudとIzumoFS間の通信でネットワークレイテンシの発生が抑えられ、性能向上が期待できる
システム構成
IzumoFSとownCloudを同一筐体に同居させる構成です。IzumoFSとownCloudをインストールするサーバを3台を用意しました。ユーザからはロードバランサー経由でownCloudにアクセスするようにします。各サーバのスペックはCPU:4コア、メモリ:14GB、HDD容量:1TBで、OSはCentOS 7.2を利用しています。また、ownCloudをクラスタ化するためにMariaDB Galera Clusterを利用しました。
構築
IzumoFSインストール事前準備
パーティション設定などIzumoFSインストールの事前準備を行います。
作業時間:約25分
IzumoFSクラスタを3台構成で構築
実効容量は1TB。
作業時間:約10分
IzumoFSクラスタ上にNFS共有フォルダを作成する
IzumoFSの管理画面でプロトコルとしてNFSを選択して共有フォルダを作成するだけで、特別なゲートウェイなしにNFSを使うことができます。
IzumoFSのNFS共有フォルダをマウントする
$ sudo mkdir /mnt/shared_folder
$ sudo chmod 770 /mnt/shared_folder
$ sudo mount -t nfs 127.0.0.1:/izumofs-owncloud-hyper /mnt/shared_folder
ownCloudクラスタを構築
IzumoFSがインストールされているサーバにownCloudをインストールしていきます。
- Apache httpd のインストール
- PHPのインストール
- MariaDB Galera Clusterのインストール
- ownCloudのインストール
- ownCloud 用のユーザーとデータベースを MariaDB に登録
作業時間:約30分
ハイパーコンバージド構成のownCloudを使ってみる
ログインするノードを指定するため、ノードのアドレスを指定して直接ログインします。どのノードのownCloudにログインしても同じ内容のものが見えるか確認しました。
ノード1のownCloudにファイル(468.8MB)をアップロードします。数秒でアップロード完了。
サーバ1のownCloudの画面:
ノード2のownCloud画面でもノード1でアップロードしたファイルが見えます。
ノード3のownCloud画面でもノード1でアップロードしたファイルが見えます。
IzumoFSの管理画面を確認すると、IzumoFSにデータが保存されていることがわかります。
ハイパーコンバージド構成のオンラインストレージが構築できました。
オンラインストレージをスケールアウト(IzumoFS + ownCloud)してみる
ノード追加によりシステム全体がスケールアウトができるか試してみました。IzumoFSとownCloudがインストールされたノードをクラスタに追加します。
IzumoFSノードを追加する
IzumoFSとownCloudをインストールしたノードをクラスタに追加します。
IzumoFSのNFS共有フォルダをマウントする
$ sudo mkdir /mnt/shared_folder
$ sudo chmod 770 /mnt/shared_folder
$ sudo mount -t nfs 127.0.0.1:/izumofs-owncloud-hyper /mnt/shared_folder
ownCloudの設定を行う
ownCloudのデータフォルダの設定とDBアクセスの設定を行います。
追加したノードのownCloud画面から他のノードと同様のファイルが見えました。
追加したノードからアップロードしたファイルも他のノードから見ることができます。
追加したノードのownCloud画面:
ノード1のownCloud画面:
これでownCloud + IzumoFSのサーバを4台クラスタリングできました。前回の記事ではownCloudサーバ1台と、IzumoFSサーバ4台による構成でしたが、それに比べるとサーバ数が計5台から4台に減っているにもかかわらず、ユーザがアクセスできるownCloudサーバが1台から4台に増えた形となり、ownCloud側の可用性が向上していることがわかります。
障害が発生しても操作が継続できるか確認してみました
1台のノードに障害が発生した場合、データがなくなっていないか他のノードでownCloudの操作が続行できるかをみるため、1台のノードのOSをシャットダウンしてみました。
アクセスしているノードを確認する
ロードバランサー経由でアクセスしているノードを確認します。ファイルをアップロードしている際に、IzumoFS管理画面のモニタリング画面でどのノードに書き込みが行われているかを見ることで、アクセスしているノードを確認します。
ノード1に書き込みが発生していることからノード1にアクセスしていることがわかります。
アクセスしているノードに障害を発生させる
ノード1のOSをシャットダウンさせることでノード1に障害を発生させます。障害発生直後は、ownCloudにアクセスできなくなりますが、ロードバランサーが5秒ごとにノードの生存確認を行なう設定にしているので、数秒で稼働しているノードにアクセスが切り替わり、再びownCloudにアクセスできるようになりました。
障害発生直後の画面:
数秒後にownCloudに再びアクセスできるようになりました。
IzumoFSの管理画面ではダウンしたノードが「応答なし」のステータスになっています。
ノード障害が発生しても、稼働している残りのノードでownCloudの操作を続けることができ、オンラインストレージの可用性が向上していることが確認できました。
さいごに
今回は他のアプリケーションと同居が可能であるというSDSの特徴を生かして、IzumoFSとownCloudとのハイパーコンバージド構成でオンラインストレージを構築しました。ownCloudに限らず、様々なアプリケーションでもハイパーコンバージド構成が有用な場合がありますので、アプリケーション特性に応じてご検討いただければと思います。またSDSによっては、IzumoFSとは違い構成が複雑なものや構築・運用負荷が高いものもありますので、各SDSの特徴を見極めて選択いただければと思います。
最近キーワードとしてよく聞かれるハイパーコンバージドインフラストラクチャですが、その実態はSDSの構成方法の一形態といえます。本記事が、SDSとハイパーコンバージドインフラストラクチャとの関係理解の助けになれば幸いです。
* この記事は実験を目的としており、動作を保証するものではありません。
* IzumoFSは、IzumoBASEの登録商標です。
* その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。